2013年12月12日木曜日

芸大出ても年収1000万円稼げない理由



バーで飲んでて、たまたまとなりに座った方に、

「芸大でてるなら、1000万ぐらい稼いでるんでしょ?」

って聞かれたことがあります。
相手の方は誰もが知っているような企業のなかなかなお偉いさんで、
自社で所有するストラディバリウスを国内出身の演奏家に貸し出したりする事業に携わることもあるそうです。


僕は答えました。

「そうなればいいんですけどねー…」



おそらく、その方がこれまでに会った事のある芸大出身の演奏家の方は、
名だたるコンクールでじゃんじゃか賞を獲っちゃったり、
世界飛び回って演奏したり、身なりも綺麗で若手であっても将来有望で、
そういうケースばかりだったんでしょう。

だからこそ、バーのマスターが「この人は芸大出身でね…」と紹介をしてくれたときに、
「ははーん、だとしたら1000万くらい稼いでるんだろうなー」と思ったのでしょう。


このエピソード、しばらく前の事ですがなかなか考えさせられるものがありました。



世の中からした「演奏家」の見え方ってどんなだろう

僕の経験上これまでだと

「音楽の道?大変だね」
「芸大っていっても卒業したあと厳しいんでしょ?」

というちょっとネガティブな意見か

「好きなことやってていいね!」
「素敵な職業ですね」

という、いろいろ置いといて、芸術家はすごいよという意見の
2通りが多かったように思います。

だからこそ

「芸大でてるんだから、稼げてるんだろ」

という意見はとても新鮮でした。
だって、お金のことってそうそう聞かれる話題ではないじゃないですか。
それに、僕らにしたって
「僕らは芸術に携わる人間だから、金勘定なんてもってのほか」
みたいな感覚を、少なからず持っている気がするんですよね。
日本人特有の「お金の話は穢らわしい」みたいな感覚。


今回は、その「お金の話なんて・・・」という気持ちをちょっと押さえて
「実際のところ演奏家として生活するってどういうことかな」というのを
考えてみます。



1000万円稼げる演奏かってどんな人なのか

年に1000万円稼いでいるクラシックの演奏家ってどれくらいいるんですか。
全演奏家人口の何パーセントなんでしょうか。
0.001%=1万人に1人ぐらいじゃないのかなぁ。
大雑把な、なんの根拠もない感覚ですが。


たとえば、2000席の会場でリサイタルをして、
そのチケットが1万円だったら単純計算で収益が2000万円。
ほんと大雑把に、会場使用料や人件費・宣伝広告費が1000万円で抑えられてるなら、
手元に残るのは1000万円、ってことになりますね。

でもまあ、毎年2000人級のホールで1万円のリサイタルをする日本人歌手は知らないです。
器楽の方はどうなのかちょっとわかりません。

300〜1000席のホールで5000〜8000円のチケット代というのが、
日本の声楽界のトップで歌っている方のコンサートの様子でしょうか。
もうこの辺は全然ちゃんとしたリサーチしてなくて肌感覚ですが。


年に1回のリサイタルで1000万円ってのは現実的じゃないですね。
毎週・毎日、日本中世界中を飛び回ってあちこちに歌いにいって、
ようやく1000万円っていうのが実際でしょうか。
というか、それほど活躍されている方も1000万円稼いでいるのかどうか不明です。
だって、一回のギャラが10万円だったら、年100回コンサートということですから。



日本のクラシック市場はそれほど広くも深くもない(気がする)

たぶん、クラシック演奏家って日本に数万人くらいいます。
で、その数万人の演奏家がそれぞれ十二分に活躍できるほどの市場が
日本にあるのかと考えると、微妙です。

クラシックの市場規模は約300億円と聞いたことがありますが、
それを仮に3万人の関係者(演奏家・プロデューサー・スタッフなどなど)で山分けしたら
ひとり頭100万円じゃないですか。ひえー。

もちろん、演奏一本で食べてるという演奏者の方が少ないでしょうから、
上の計算は単なる思考実験ですが、それでもそこから見えてくる景色は明るいものではないですね。


芸大卒で1000万円を稼ぐにはどうしたらいいのか


  • 1万円のチケットで1000人。
  • 一回10万円のギャランティで年100回の演奏。
  • 3000円のCDを3333枚。
  • ひと月2万円の月謝で42人の生徒。


どれかひとつっていうのは無理ですから、
この他にも色んな収入源を組み合わせて仕事をしていく、というのが現実的な方法でしょう。
というか、いま活躍されている演奏家の方はみなさまそうしているはず。
僕はまだ活躍の「か」の字もいかないので想像するのみですが。

実力も知名度もある成功された演奏家さんも、身ひとつで食べていくということは
本当に大変なことでしょう。
若くて知名度のない演奏家にとってみたら、食べていくという目標がまず
地獄への道を歩くような状況です。


もちろん僕たち演奏家がまず大切にすることは
自らの技を磨き、自らの人間としての魅力を深め
少しでも素敵な時間を聞いて下さる方に提供できる実力を持つこと。
聞いていただくたびに新しい発見を与えられるよう常に自己を高めていくこと。
そういう日々の努力です。


それでも、日本のクラシック音楽市場を考えれば、
どれだけ頑張っても、どれだけ才能があっても、
もしかしたら年収100万円ぐらいしか稼げないのかもしれないのです。


クラシック業界で食べていくのは(実力主義の面でも、市場規模の面でも)厳しい、と
前々から聞かされ自分もそう思っていましたが、
改めて簡単に計算してみると、背筋の凍るような思いがしますね笑



とはいえ、そういう事実が見えてきたところで
「こんな業界はダメだ。やめよう」とは思わないのが不思議なところです。



まずは、「この人を聞くためなら自分のお金を払ってもいい」と思っていただけるような
そんな歌をたくさんうたえるように、頑張るのみです。








出演情報

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第4回まちなかの文化芸術イベント

シティ☆コンサート

〜Xmas オペラコンサート〜   日時 平成251214日(土) 午後130分開演 

   会場 甲府市役所本庁舎 1階 市民プラザ(ローソン横) 
   出演 廣橋英枝(ソプラノ)
      佐々木洋平(テノール)
      山野靖博(バス)
      森脇涼(ピアノ)
入場料 無料 
主催 甲府市教育委員会 
曲目 アヴェマリア グノー作曲

   アヴェマリア シューベルト作曲

   アヴェマリア カッチーニ作曲

   星は光りぬ

   クリスマスソング
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Cloud of Arts 主催


廣橋英枝&山野靖博 デュオリサイタル


日時 2014年2月23日(日) 14:00開演 (13:30開場 15:50終演予定) 
会場 山梨県立図書館2階 多目的ホール(全162席) 
チケット 全席自由3000円 
出演 廣橋英枝(ソプラノ)

   山野靖博(バス)

   林正浩(ピアノ) 
お問い合わせ 08050946204(山野)

       y.unyou.y@gmail.com(山野)
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